こんにちは、miiveでプロダクトマネージャーをしているKengoです。
今回は、PRD(プロダクト要求仕様書)のレビュープロセスをAIで自動化した取り組みについてご紹介します。
背景と発生していた課題:プロダクトマネジメントの「広がり」と「複雑さ」
miiveは創業当初から2025年後半まで、プロダクトマネジメントを一人のPdM(プロダクトマネージャー)が担う体制でした。しかし事業の拡大に伴い、複数のPdMメンバーが並走し、エンジニアもプロダクトマネジメントの一部を担うようになってきました。
チームの規模が広がることはとても良いことですが、規模拡大に伴い、新たな課題も見えてきました。 プロダクトマネジメントに関わる人数が増えるほど、「ドメイン知識の濃淡」が生まれ、考慮漏れのリスクが高まるという問題です。
PRDを書く全員がmiiveのドメイン知識を深く持った上で作業する必要があります。しかしmiiveのプロダクトドメインは複雑です。
例えば、以下のようなドメインが複雑に絡み合っています。
- 福利厚生サービスに関わる、税務・労務の法令
- 決済・ポイント・カード発行に関わる、フィンテックの専門知識と法令
- BtoBtoE(企業間取引を通じて最終的に従業員に届けるビジネスモデル)という構造が生む、機能変更による管理者・従業員それぞれへの影響
一人のPdMがすべてを把握していた頃は、経験と勘でカバーできていた部分もありました。しかし複数人でプロダクトマネジメントを行うようになると、「その観点、知らなかった」「そこまで考慮できていなかった」というリスクが高まります。「考慮漏れ」が起きた場合、顧客への影響や事業リスクに直結するケースもあり、許容できません。
一方で、すべての観点を毎回インプットしてPRDを書くのも大変で、すべての観点を網羅してレビューするのも大変になります。 特にPRDのレビューは、書いた本人以外がキャッチアップしながらレビューする必要があり、レビュアーの負荷も高くなりがちです。
解決アプローチ:「一次レビュー」をAIに任せる
この課題に対して、PRDレビューエージェントを構築しました。
考え方としてはシンプルで、
プロダクトとして考慮すべき観点、考慮が漏れやすい領域をAIに学習させ、PRDの一次レビューを自動化する
というものです。
人間によるレビューをなくすのではなく、「AIが一次チェックを行い、本当に議論が必要な論点に人間のレビューを集中させる」という方針です。
どうやって作ったか
Notionのカスタムエージェントを活用
今回はNotionのカスタムエージェント機能を利用してPRDレビューエージェントを構築しました。
miiveではPRDをNotionで管理しているため、ドキュメントとエージェントを同じ場所で完結させることができます。これにより、「レビューのためにどこかへコピーする」という余分な手順が不要になっています。
SlackからメンションするだけでOK
エージェントへのアクセスはSlackのメンションで行えるようにしています。
@prd-review-agent [Notion PRDのURL]
これだけでレビューが始まります。
Slackを選んだ理由はシンプルで、チームが日常的に使っているインターフェースだからです。
新しいツールを覚える必要もなく、特別な操作も不要で、いつも通りSlackを開いてメンションするだけで使えます。 「ちゃんと使われるエージェント」を作るためには、日常の延長線上に置くことが重要という思想からSlackで完結するようにしています。
エージェントが確認する観点
レビューエージェントは、以下のような観点を中心にPRDを評価します。
- 税務・労務の法規制との整合性(非課税枠、給与課税、関連法令の準拠 など)
- フィンテック領域の考慮事項(残高整合性、関連法令の準拠 など)
- 管理者・従業員それぞれへの影響の網羅性
- エッジケースや例外フローの記述有無
- 非機能要件(セキュリティ・権限)の記載有無
これらはmiiveのプロダクトとして「考慮すべき観点」として蓄積されたナレッジをもとにしています。

導入効果
PRDの一次レビューが約30秒で完了
従来の人間が実施するレビューでは、PRDを読み込んでレビューコメントを付けるまでに、少なくとも数十分はかかっていました。 それが、エージェントによる一次レビューではおよそ30秒 で完了します。
考慮漏れが実際に見つかった
最も重要な効果として、実際にAIレビューを使ってみると、考慮が漏れていた観点や追加で検討が必要な項目が次々と洗い出されました。 私自身もPRDをレビューしてもらった際に「書いたときには気づかなかったが、言われてみれば確かに」という指摘が多く、PRD全体のクオリティが底上げされていると感じます。
まとめ
今回の取り組みは、「ドメイン知識をエージェントに載せてレビューを自動化し、暗黙知を民主化する」試みでした。
PRDのレビューはどうしても経験や専門知識に依存しがちです。その「暗黙知」をエージェントに学習させることで、チームの誰でもハイクオリティなフィードバックが受けられる仕組みになっています。 PRDレビューエージェントはその第一歩に過ぎません。「ドメイン知識をチーム全員の武器にする」ために、AIの活用をプロダクト開発のあらゆる場面に広げていきます💪
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